当社は、プリント配線板用原板生産システムの実験センターを、電機システム工場(愛知県豊橋市)に開設、2000年12月より受託試験を含めた各種実験を進めています。銅箔厚9ミクロンというプリント配線板用原板に対応した実験のできる施設は日本で初めてのものです。
プリント配線板用原板は、ごく薄い電気絶縁性材料(プリプレグ)の両面(あるいは片面)に、厚さミクロン単位の銅箔を置き熱圧着したもので、それを切断して回路を焼付けエッチングし、さらに何枚か重ねて多層配線板(基板)を作ります
神鋼電機は、電気絶縁性材料と銅箔を重ね圧着する原板生産システムのトップメーカーで、これまで、国内、東南アジア、欧米むけに数多くの納入実績があります。このような旺盛な受注を背景として、今後主流になる銅箔厚9ミクロンという配線板について、ユーザーの要望にそった生産システムを提供するための開発、およびユーザーからの持ち込み実験をおこなう目的でセンターを開設しました。広さは約200uです。
原板の生産では、材料を重ねて圧着する(組み合せ)精度が品質と歩留まりのポイントとなるため、センターには各種材料の組み合せのできる設備を常設し、対象のシステムについて、「組み合せ精度」、「シワ発生の有無」、「組み合わせ速度」などの確認実験をおこないます。このようなトータルな実験のできる施設としても、日本では初めてです。 |
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プリント配線板用原板はガラス繊維クロスに熱硬化性樹脂を含浸させた電気絶縁性材料と高品位の電解銅の超薄箔からなっています。電気絶縁性材料の厚さは50ミクロン前後、銅箔の厚さは12〜70ミクロンが現在は主流です(銅箔の面積は1m×2mや1m×3mが一単位です)。
しかし、コンピュータ分野では、半導体をはじめとしてハードの高性能化、多機能化が進み、同時に機器の小型化・軽量化も進んでいます。さらに、携帯電話に代表されるモバイルギアも普及しています。
高機能で小型・軽量化を実現するためには、配線の高密度化が必要なため配線板の多層化が進み、最近では23層という配線板も登場しています。他方、狭いスペースに回路を納め機器を小型化するためには、単に多層化するだけではなく、多層化したプリント配線板をより薄くよりしなやかに作らなければなりません。このため、配線板の材料そのものもより薄くなり、今後は銅箔の厚さは9ミクロンが主流になっていきます。
したがって、このような非常に薄い材料を取り扱う原板生産システム自身も、その薄さに対応しなければならなくなっています。
神鋼電機では、長年、原板生産システムを製造してきましたが、年々薄くなる材料を取り扱うために、以下のような技術を開発してきました。
たとえば、原板の組み合せ作業はゴミを嫌いますから、発塵防止をめざした設計と製造を基本にしています。さらに、銅箔を扱うためには吸盤を使いますが、超薄厚のためいったんシワやキズをつけると、その部分は製品として使うことはできなくなり歩留まりが悪くなります。このため、ガラスなど壊れやすいものを吸引式で搬送するバキュームリフトやサーボモータなどを製造した技術を応用し、銅箔や原板を吸盤で吸い上げる際、その部分がシワ(カラスの足跡やキスマークと呼んでいます)にならないよう、細長い筒の下面に多数の微孔をあけ柔らかく吸い上げられる「筒形吸盤」を開発しました。
このほか、原板を置くステンレス板の完全乾燥をおこなえる装置を開発し、残存水分が原因の原板の不良を抑えています。また組み合せのスピードアップをはかり、製造効率の向上もおこなっています。
以上のような技術をより洗練させ、また、ユーザーのニーズにより適したプリント配線板用原板生産システムを提案するため、実験センターが開設されました。
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