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地滑り監視、避難情報、災害情報を行政と住民が共有化
土砂災害事前感知警報システムを開発
航空用の超高精度傾斜角測定技術やネットワーク技術を駆使して
当社は、防衛庁に独占的に納入している航空用高精度傾斜角測定技術を民生転用し開発した超高精度の傾斜角計を中核システムに組込んだ、「土砂災害事前感知警報システム」をこのほど開発しました。
このシステムは、地滑り危険箇所の自動監視、地盤データの処理・分析、避難情報・災害情報の通報など、地滑りについての情報を行政と地域住民が共有し、双方向での情報発信により危険予知や迅速な避難を可能にして、被害を可能な限り抑える災害防止ネットワークシステムです。
全国には地滑り危険地域(地すべり防止区域)が3200箇所以上あります。1999年には、地滑り、土石流、崖崩れが全国で約1500件発生し、多大な被害が出ています。このような地滑り災害から、住民の生命や財産を守るための「土砂災害事前感知警報システム」で、広範な地域をカバーする「広域システム」と、双方向の情報伝達を必要としない限定された区域をカバーする「ローカル簡易システム」があります。

当社は高性能傾斜角計を航空分野向けに開発し、防衛庁のミサイル発射台やレーダー機器の傾斜角測定用などに独占的に納入しています。
「土砂災害事前感知警報システム」の観測装置の中心となる地盤傾斜計は、上記の航空用傾斜角測定用技術を利用して民生用に開発したもので、角度検出分解能は0.02秒(1/180,000度)と、気泡管式傾斜角計に比べ約50倍の精度が得られるサーボ傾斜角計を採用しています。これは、地球の潮汐による地殻のわずかな傾きの変化も検知できるほどの能力です。この高精度を利用して、潮汐による一日周期でおきる定期的な数値の変化をモニターすることにより、地盤傾斜計が正常に作動しているかを離れた場所から確認することができます。地滑り危険地帯など人の入りにくい場所に設置される観測装置にとっては、なくてはならない機能で、当社の高精度の傾斜角計のみがもつ優れた機能を利用したものです。         
また、情報処理とネットワークには、これまで当社が上・下水道などの公共インフラシステムで培ってきたネットワーク技術を駆使し、高精度の観測と迅速な情報収集・伝達が可能な感知警報システムを完成しました。
(ネットワークの概要と傾斜角計、関連設備のハイブリッド発電については以下の参考資料をご参照ください)。
【参考資料】
1. 本システム開発の背景
地滑り災害については、本年4月1日から、いわゆる「土砂災害防止法」が施行され、それまでの地滑り防止工事中心の対策から、土砂災害の恐れのある地域についての危険の予知、警戒避難体制の整備、住宅等の新規立地の抑制と移転など、ソフト面での強化に政策が転換されました。このように、地滑り対策では危険の予知と迅速な警戒避難体制が重視されるようになっています。

2.観測装置の中核に高精度な傾斜角計を採用
「土砂災害事前感知警報システム」では、地滑り危険箇所に@GPS(全地球測位システム)観測装置A地下水位計B孔内伸縮計C雨量計D地盤傾斜角計などの各種観測装置を設置しますが、その中核となる観測装置としては当社が独自に開発した高精度なサーボ傾斜角計を組込んでいます。傾斜角計は地表の傾斜変動を高精度に測定し、地すべりの可能性、または、すでに動き出している場合はその速度などを確認できます。
さらに、地滑りの初期運動計測や定点観測が可能なため、潜在的な地滑りの判定、地滑り活動範囲の判読、地滑りが活動中なのか終期にあるのかが的確に判定できます。
これまでの地盤傾斜角計は、検出角度が1秒(1/3,600度)程度の気泡管式が使われてきました。これに対して今回採用したサーボ傾斜角計は、永久磁石とコイルなどによるサーボ機構に採用より、検出精度は180,000度と非常に高く安定しているという特長があります。
また、観測機器は地滑り危険地域に設置するため、@信頼性が高く機能的で頑丈なことA移動の状況を正確にすばやく伝達できる応答性の高いことB移動速度の比較的遅い地滑りの特性でも時系列の変化が把握できることC野外に設置するため、取り扱いが容易なことが求められます。
当社の開発したサーボ傾斜角計は、
1. 角度検出分解能が0.02秒(180,000度)と極めて高く安定している。
2. サーボ増幅器を内蔵しているため、出力電圧が大きく電源の変動の影響をまったく受けない。
3. 長寿命で1500Gの衝撃に耐えるなど振動・衝撃に強い。
4. −18゚C〜+71゚Cと使用可能温度領域が広い。
5. 密閉構造のため屋外での使用が可能。
など、地盤傾斜角計に最適な特性を備えています。

 なお、当社の傾斜角計は、防衛庁向け以外にもシールドマシン、転炉やゴミの溶融焼却炉の角度設定、高速増殖炉「もんじゅ」など原子力施設のレベル測定、工作機械の定盤の水平精度合わせ、クレーン車の転倒防止センサーなどに採用されています。

3.公共インフラシステムで培った広域監視・制御システムのノウハウを投入
当社は、これまで上・下水道システムや道路管理システムなどの統合制御システムや集中監視制御システムについて多くの実績をもっています。それらでは、機器の自動運転、データ収集・処理、データの高速通信、集中監視制御技術などを駆使して高精度で効率的なシステムを実現しています。
この経験とノウハウを使い、今回の「土砂災害事前感知警報システム」では、観測データの収集/処理、災害情報/避難情報の迅速な伝達や住民への警報/告知などを、有線放送、地域ケーブルテレビ、一般電話回線、ISDN、光ケーブル、多重無線、インターネットを利用したネットワークにより実現しました。これにより、一方的な行政側からだけの情報発信ではなく、住民からの目撃情報、前兆情報、避難/安否情報など双方向の情報発信とその評価が可能になり、被害の軽減、さらに防災意識の向上に役立つと考えられます。

4.ハイブリッド発電による電力供給も
地滑り観測機器は、その性質上、電源の取りにくい場所に設置されることが少なくありません。また、観測データが必要になる時期は豪雨、豪雪など電力の供給がストップするおそれがあります。当社では、太陽光パネルによる発電と風力発電、そしてディーゼルエンジンによる非常発電装置を組み合わせたハイブリッド発電システムを開発し、すでに松本砂防工事事務所殿管内の「金山沢土石流観測所」に納入しています。このハイブリッド発電システムを現地観測局に設置し、観測機器への給電やデータの送信をおこない、緊急時にデータが途切れる事態を防止することも可能です。

5.双方向情報伝達を必要としない簡易型も可能
今回の「土砂災害事前感知警報システム」は、観測機器から監視局、住民、関係行政機関まで、観測データと災害情報・避難情報を双方向で送ることのできる大規模な広域ネットワークを組む場合もありますが、地滑り危険箇所によっては、周辺に住民が住んでいないなど、必ずしも大規模ではなく、また、双方向の情報伝達が必要のない場合もあります。このようなケースや場所には、傾斜角計などの観測機器からのデータを受け処理するだけの装置、あるいは住民と行政との間の双方向の情報発信はせず、行政側からの情報発信のみに限る簡易型装置を各地区に単独設置することも可能です。この場合、電源としては、電池式あるいは太陽光発電を利用し、危険が発生した場合に警報装置が作動して、警報やアナウンスを自動的に発する簡易型も可能です。

 


資料:イメージ図
■土砂災害事前感知警報システム
■土砂災害事前感知警報システム(簡易型)

 

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